パーキンソン病をお持ちのクライアント様やご家族様から、「歩こうとすると足が床に張り付いたようになる」、「方向転換や狭い場所で急に動けなくなる」、といったご相談を受けることがあります。
これらの症状の代表的な運動障害がすくみ足です。すくみ足は、歩行能力や外出機会に大きな影響を及ぼし、転倒リスクや生活の質の低下につながる重要な症状です。
今回のブログでは、すくみ足が起こる仕組みを整理しながら、日常生活動作の改善につながる運動療法アプローチについて解説します。
1.すくみ足とは
すくみ足とは、歩行中や歩行開始時に、足が一時的に前へ出なくなる現象を指します。「足が床に貼り付いたように感じる」「足踏み状態になる」と表現されることも多く、数秒から数十秒続く場合があります。
日常生活でみられるすくみ足の特徴
日常生活では、特に以下のような場面で出現しやすくなります。
・歩き始めの最初の一歩
・方向転換や旋回動作
・狭い場所(ドア、廊下、トイレなど)
・人混みや急がなければならない状況
・注意が分散する二重課題場面
すくみ足が引き起こす二次的な問題
すくみ足が頻発すると、
・転倒リスクの増大
・外出や歩行への不安
・活動量の低下
・社会参加の制限
といった二次的な問題が生じやすくなります。
Hoehn & Yahr分類とすくみ足の関係
すくみ足は、Hoehn & Yahr分類Ⅲ度以降で目立つことが多い症状ですが、Ⅱ度の段階から軽度に出現する場合もあります。特に姿勢反射障害や無動・寡動と組み合わさることで、歩行障害がより顕著になります。
2.すくみ足が生じるメカニズム
すくみ足の背景には、大脳基底核を中心とした運動制御ネットワークの障害が関与しています。
内発的歩行制御の障害
健常者の歩行は、自動化された運動として無意識に制御されています。しかし、パーキンソン病をお持ちの方では、この自動運動の生成機能が低下し、歩行に対して過剰な意識や注意を必要とします。
その結果、「考えすぎることで動けなくなる」という状態が生じやすくなります。
注意機能の限界と二重課題
すくみ足がある方は、歩行そのものに多くの注意機能を使っています。そこに方向転換や環境変化、会話などが重なると注意機能が分散し、動作が停止しやすくなります。
3.薬物療法と運動療法を組み合わせる意義
L-ドパ製剤などの抗パーキンソン病薬は、すくみ足を含む運動症状に対して有効性が示されています。これらの薬物療法に運動療法を組み合わせることで、歩行や日常生活動作における安定性や再現性が高まり、より良い結果につながりやすくなります。
特に運動療法では、
・歩行開始や方向転換に対する具体的な工夫
・動作の大きさやリズムの調整
・生活環境や場面に応じた動作戦略の習得
といった要素を加えることで、薬物療法の効果を日常生活の中で活かしやすくなります。
薬物療法と運動療法は、それぞれ異なる側面から症状に働きかけます。両者を適切に組み合わせることで、歩行動作の安定性や安心感の向上につながり、外出や社会参加を継続しやすい環境づくりが可能になります。
4.すくみ足に対する運動療法アプローチ
― フィジオセンターで重視している3つの視点 ―
フィジオセンターでは、すくみ足に対して以下の3つの視点を重視したリハビリテーションを行っています。
① 外的キューを活用した歩行開始・歩行継続の促通
すくみ足は内発的な運動制御が困難な一方で、視覚・聴覚などの外的刺激に反応しやすい特性があります。
床のライン、視覚的目標、リズム音、カウントなどを活用し、歩行開始や足の振り出しを促通します。
② 歩行パターンと方向転換動作の再学習
すくみ足があると、歩幅が小さくなり、すり足歩行が助長されます。LSVT® BIGの考え方を応用し、「大きく・はっきり」した歩行や方向転換を練習することで、運動プログラムの再構築を図ります。
③ 日常生活を想定した段階的な動作練習
直線歩行だけでなく、立ち上がり → 歩行 → 方向転換 → 着座、といった一連の動作を段階的に練習し、実際の生活環境に近い条件での再現性を高めます。
まとめ:すくみ足への適切な評価と運動療法の重要性
すくみ足は、パーキンソン病において転倒や生活制限に直結する重要な症状です。しかし、適切な評価と運動療法を継続することで、歩行の安定性や動作の予測性に対してアプローチすることが可能です。
「歩くことに自信が持てなくなってきた」
「リハビリをしているが、すくみ足が改善しない」
そのようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、専門的な評価と運動指導をご検討ください。
フィジオセンターでは、症状や生活背景に合わせたオーダーメイドのリハビリテーションを提供しています。
理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755