パーキンソン病の歩行障害の種類と運動療法アプローチ

パーキンソン病の歩行障害の種類と運動療法アプローチ

転倒のリスクを軽減するために

1.パーキンソン病における歩行障害とは

パーキンソン病は、脳のドパミン不足により、運動機能に様々な障害を引き起こす神経変性疾患です。その中でも、歩行障害は日常生活の自立度や外出機会に最も大きく影響し、転倒リスクに直結する重要な症状です。

パーキンソン病の歩行は、単に「歩きにくい」というだけでなく、複数の特徴的な症状が組み合わさって出現します。

代表的な歩行障害の症状

・小刻み歩行(すり足歩行): 歩幅が極端に小さくなり、足をほとんど上げずにすり足で歩く。
・すくみ足: 歩き始めや方向転換時、狭い場所などで、足が床に張り付いたように動かなくなる現象。
・突進現象: 止まりたいのに身体が前のめりになり、小走りのように速くなってしまう現象。
・姿勢反射障害: バランスを崩した際に体勢を立て直す反応が遅れ、転倒しやすくなる。

これらの症状が重なることで、患者様は「歩くことへの自信の喪失」や「外出への不安」を感じ、活動量の低下という二次的な問題が生じやすくなります。

2.歩行障害が生じるメカニズム:脳の運動制御ネットワークの障害

パーキンソン病による歩行障害の背景には、運動の自動制御を担う大脳基底核を中心とした運動ネットワークの機能低下が深く関わっています。

① ドパミン不足による自動運動の障害

健常者の歩行は、意識することなくスムーズに、そしてリズミカルに(自動的に)行われます。しかし、パーキンソン病ではドパミン神経の変性により、この「自動的な運動プログラム」の出力が困難になります。

その結果、歩行という複雑な動作一つ一つに過剰な意識と注意を向ける必要性が高まります。これが、特に二重課題やストレス下での動作停止(すくみ足など)を引き起こす原因となります。

② 姿勢制御とバランスの障害

パーキンソン病では、主に以下の3つの要素が複雑に絡み合い、姿勢反射障害を引き起こします。

・体幹の伸展筋(背中を伸ばす筋肉)の活動低下により、身体が前かがみになる。
・足関節の運動戦略の低下により、バランスを崩した際に足首の細かな動きで調整しにくい。
・体幹の剛性(固さ)の増大により姿勢を修正するための反応が遅れる。

    この前傾姿勢と反応の遅れこそが、突進現象や転倒リスクを高める要因となります。

    3.歩行障害に対する専門的アプローチ:内服薬と運動療法の併用

    パーキンソン病の治療は、薬物療法が中心となりますが、ここで重要となるのが、専門的な運動療法を組み合わせることです。

    薬物療法の効果を最大化する運動療法の役割

    運動療法は、薬物だけでは改善しにくい以下の要素に焦点を当てます。

    ・動作の再現性: 薬が効いている時間帯(On-time)に得られた良い動作パターンを、身体に繰り返し実施する事。
    ・歩行戦略の習得: 環境変化や注意が分散する状況でも動けるための具体的な代償戦略(外的キューの活用など)を学ぶ事。
    ・非運動症状への効果: 運動を通じて、抑うつや不安、睡眠障害などの非運動症状を軽減する事。

    内服薬と運動療法の両輪が噛み合うことで、動作の安定性を高める事を目標とします。

    4.フィジオセンターの歩行障害に対する運動療法アプローチ

    フィジオセンターでは、パーキンソン病をお持ちのクライアント様の歩行障害に対し、単なる筋力強化だけではなく、以下の3つの視点を考慮してしています。

    ① 「外的キュー」を活用した歩行制御の再獲得

    内発的な運動制御が苦手なパーキンソン病の特性を利用し、視覚(床の線、目印)、聴覚(メトロノーム、カウント)、触覚(セラピストの手の誘導)といった外的刺激(外的キュー)活用します。

    ② 動作の「大きさ」と「広さ」を意識した歩行パターン修正

    小刻み歩行は、やがて関節の柔軟性を低下させ、すり足歩行を助長します。

    当センターでは、LSVT® BIGなどの考え方を応用し、「可能な限り大きく、はっきりと」歩く練習を行います。これにより、歩幅の増大、腕の振り幅の拡大、そして体幹の回旋を促し、よりダイナミックで効率の良い歩行パターンを実施します。

    ③ 日常生活を想定した一連の動作の練習

    リハビリ室での直線歩行だけでなく、実際の生活で最も問題となる場面(転倒しやすい状況)を想定した練習を段階的に行います。

    ・方向転換(旋回): 小さく回るのではなく、大きく円を描くように回る練習。
    ・二重課題: 歩きながら会話をする、荷物を持つ、立ち止まるなどの練習。
    ・環境への適応: 狭い場所(ドア、廊下)を通る練習。

    これらの練習により、動作の再現性を高め、予期せぬ場面でもスムーズに対応できる「動作戦略の引き出し」を増やします。

    まとめ

    パーキンソン病の歩行障害は、生活の質を大きく左右しますが、原因を正しく分析し、専門的な運動療法を継続することで、病態の進行を抑制できる可能性があります。

    「歩くことが億劫になってきた」、「すくみ足や転倒が怖い」

    そのような不安をお持ちの方は、ぜひ一度、フィジオセンターにご相談ください。あなたの症状と生活背景に合わせたオーダーメイドのリハビリテーションを提供いたします。

    理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
    Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
    日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
    BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
    津田 泰志

    フィジオセンター
    TEL:03-6402-7755

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