変形性股関節症と雨の日の傘の使用との関係について

変形性股関節症と雨の日の傘の使用との関係について

変形性股関節症をお持ちの方にとって、日常の「歩く」動作そのものが関節への負荷や痛みに関係する事があります。特に雨の日の外出では、傘をさすという行為が股関節や体幹に加わる力に影響する可能性があります。近年の先行研究を確認しても『変形性股関節症例が傘を差して歩く場合の影響』を直接テーマにした臨床研究は確認できませんでした。しかし、傘使用時に伴う「片手がふさがる」「滑りやすい路面を歩く」「視野が遮られる」「片手保持や荷物の偏りが生じる」といった条件に関しては、他の領域で多くの先行研究があります。以下では、それらの知見をもとに、雨の日の歩行が股関節に与える影響を整理し、現実的な対策を提案します。

□雨の日の傘の使用による影響について

1つ目は、片手がふさがることによる腕振りの制限です。腕振りは、歩行時の安定性に関与します。傘を片手で持つと体幹の横方向の制御が乱れ、股関節に加わる余分な力の増加につながる可能性があります。これらの関節に加わる力は、変形性膝関節症の疼痛や変形の進行と強く関連するため、腕振りが非対称になる傘差し歩行は不利な条件と考えられます。

    2つ目は、滑りやすい路面での筋活動様式と姿勢変化です。雨天の濡れた路面では、足関節の柔軟性を高めながらも、膝・股関節を少し曲げて重心を低く保つ歩行パターンが観察されています。この適応は安定性向上の一方で、体幹が前傾し易く、腰痛や大殿筋の上部線維の疲労の誘因となり得ます。滑りやすい環境では「安全のための屈曲位保持」が、逆に他の組織の筋疲労や疼痛を引き起こす可能性に注意が必要です。

      3つ目は、傘による視野の制限と注意機能の分散です。傘は視界の一部を遮ることで、足元確認の遅延や障害物への反応遅れを引き起こす可能性があります。雨天では、傘による「視野遮蔽+認知負荷」の増大が転倒リスクを高める要因となるため、この点も併せて注意が必要です。

      □フィジオセンターでの実践的アドバイス

      1つ目は、両手を空ける対応です。レインウェアを使用する事で、両上肢の腕振りが可能となり、視野の傘と比較すると確保し易くなります。また、普段から杖を使用されている方についても、床面に対して注意は必要ですが、杖の使用が可能となります。

      2つ目は、歩くフォームの確認です。歩幅が大きい場合は、滑り易い床面に対して足部が安定しくい状況となります。歩幅を普段より少し短くする事で、股関節に余分な負担を加えずにより安定して歩く事が可能となります。

      3つ目は、滑りにくい靴の選択です。基本的な事ですが、足に合った滑りにくいシューズを選択する事で、より安定した歩行が可能となります。

      フィジオセンターでは、変形性股関節症・発育性股関節形成不全・大腿骨寛骨臼インピンジメントなどをお持ちで、医療機関で外来リハビリテーションを受けられない方や、保険制度上リハビリが終了してしまった方、並行して追加のリハビリテーションを希望される方には、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。

      理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
      Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT®BIG認定セラピスト
      BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
      津田 泰志

      フィジオセンター
      TEL:03-6402-7755

      一覧に戻る
      完全予約制
      ご予約はこちら