股関節の疼痛(痛み)は、関節軟骨の摩耗や滑膜炎などの要因だけでなく、骨盤の動きの制御不全によっても増悪することが知られています。特に「骨盤回旋(立っている姿勢では大腿骨に対して骨盤の捻りの動き)」の制御は、股関節への荷重配分と関節内圧に大きく影響を与える重要な要素です。通常の場合では、歩行や立位での左右骨盤回旋がわずかに生じ、骨盤と大腿骨と脊柱の協調的な作用により関節内圧を一定範囲に保ちます。しかし、変形性股関節症をお持ちの方の場合は、疼痛や関節可動域制限、筋肉のアンバランスによりこの回旋を調整する機能が低下し、関節内圧が不均等化することが報告されています。
骨盤が過度に前方または後方に回旋すると、大腿骨頭は寛骨臼に対して偏位し、股関節の負荷が関節面の局所に集中します。この状態は滑膜や関節包への刺激を強め、疼痛のきっかけとなる可能性があります。また、骨盤回旋の左右差が大きいと、片側股関節に過剰な剪断応力が生じる事が多く、軟骨下骨の微小損傷や関節液圧の上昇を引き起こします。
このように、骨盤回旋制御の低下=股関節求心位保持の破綻として捉えられ、疼痛や股関節機能低下の一因となることが示されています。
□フィジオセンターでのアプローチについて
変形性股関節症における骨盤回旋制御の評価と介入は、疼痛軽減と機能改善のための重要なステップです。フィジオセンターでは以下のようなアプローチを実施する事があります。
1つ目は、骨盤の回旋に関わる筋肉の再教育を図る事です。骨盤前方回旋側では、同側の大腿直筋・大腿筋膜張筋・腸腰筋などの過活動を抑制し、腹横筋や大殿筋の下部線維の活動を促します。反対に、骨盤後方回旋側では、ハムストリングスの過活動を抑制し、多裂筋や腸腰筋を含めた抗重力筋の活動を促します。
2つ目は、股関節の求心位を保つ事を促すエクササイズの実施です。例として、仰向けに寝た状態から膝を立てて、体幹のインナーマッスルの働きを先行した状態からの、股関節の回旋運動。立った姿勢では、骨盤を中間位保持したままでの股関節の軽度外旋運動などを行い、股関節が安定した位置関係の中での回旋運動が得られるようにアプローチを行います。
3つ目は、姿勢の取り方や動作方法の確認です。特に座位姿勢の中では、足を組んでしまう姿勢やデスクワークを長時間行う場合に、モニターやパソコンが体の正面ではなく左右どちらかにある場合は、これらの要因が骨盤の回旋に影響する事が想定されます。
変形性股関節症をお持ちの方では、骨盤回旋制御の低下が股関節内圧の不均衡を引き起こし、疼痛の一因となります。このような機能の低下が、関節内圧や滑膜への負荷が増大するため、定期的なメンテナンスの必要性が想定されます。
フィジオセンターでは、変形性股関節症・発育性股関節形成不全・大腿骨寛骨臼インピンジメントなどをお持ちで、医療機関で外来リハビリテーションを受けられない方や、保険制度上リハビリが終了してしまった方、並行して追加のリハビリテーションを希望される方には、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT®BIG認定セラピスト
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755