変形性関節症と外出頻度との関係について

変形性関節症と外出頻度との関係について

変形性股関節症は、加齢に伴う関節軟骨の摩耗や骨形態の変化を特徴とし、歩行や立ち上がり動作など日常生活の多くの動作に影響を及ぼす疾患です。変形性股関節症をお持ちの方の場合、痛みや股関節の関節可動域制限により「外出頻度の低下」が見られやすく、身体機能だけでなく、心理的・社会的な側面にも影響が及ぶと考えられています。本日のブログでは、最新の研究をもとに変形性股関節症をお持ちの方の、外出頻度と健康状態の関係を解説し、日常生活での実践的な対応方法を紹介します。

□ 外出頻度と身体機能・健康との関係

近年のヨーロッパの疫学研究では、変形性股関節症をお持ちの方、高齢者約900名を対象に、外出頻度と身体機能・生活の質との関連が調査されました。その結果、週3回以上外出する群は、週1回以下しか外出しない群に比べて、足の筋力・歩行速度・バランス能力が有意に高く、5年後の追跡においても高い機能が維持されていました。

これは、単なる「歩行距離の増加」ではなく、外出そのものが活動意欲や社会的刺激を生み、心理面を介して運動機能に良い影響を与えることを示しています。

□ 外出頻度低下に影響する要因
変形性股関節症をお持ちの方が外出を控える理由には、以下のような複数の要素が関係します。

1つ目は痛みと股関節の可動域制限です。歩行時の鼠径部痛や股関節の動かしにくさにより、長距離移動を避ける傾向があります。

2つ目は、筋力・バランスの低下です。大殿筋・中殿筋・腸腰筋などの股関節周囲筋の筋力低下などにより、バランス機能が低下し易く、転倒への不安が強くなる事で外出意欲が低下します。

3つ目は、心理的要因です。「痛みが強くなるのを避けたい」といった不安感が、結果として行動制限の自己強化につながります。

4つ目は、環境的要因です。階段・坂道・段差などの多い生活環境では、物理的なバリアが外出制限の要因になります。

□ 外出を継続することの有効性について
外出に伴う「軽度〜中等度の運動負荷」は、変形性股関節症において以下のような生理的メリットをもたらします。

1つ目は、関節軟骨の代謝促進です。適切な荷重と除荷の繰り返しにより、関節液の循環が促進され、軟骨への栄養供給が改善します。

2つ目は、筋量・筋質の維持です。より良い身体環境で歩く事で、特に大殿筋・中殿筋・大腿四頭筋の萎縮防止により、足の筋力を保つ事が可能になります。

3つ目は、疼痛閾値の上昇です。適切な定期的な運動によるエンドルフィン分泌増加により、慢性疼痛の知覚が軽減します(痛みを感じにくくなる事)。

4つ目は、心理的健康の改善です。外出による日光曝露はセロトニン分泌を促し、抑うつ傾向や不安の軽減につながります。

□ フィジオセンターでのアプローチの例

当センターでは、変形性股関節症の方が「外出を安全かつ快適に続けられること」を目標に、以下のようなアプローチを行います。

1つ目は、歩くフォームの確認と必要なエクササイズの実施です。変形性股関節症をお持ちの方でも、歩くフォームはお一人お一人異なります。その方の歩くフォームや痛みの部位を確認して、その他の理学的所見と組み合わせながら股関節に負担の少ない歩くフォームへ誘導するための、運動療法を提案します。

2つ目は、外出する際の環境設定です。適切な靴を選択する事、関節内の痛みや炎症が疑われる場合は、T字杖からノルディックウォーキングのポールを使用する事で、股関節に負担の少ない形で外出を継続する事があります。

3つ目は、活動量の管理です。スマートフォンのアプリにある、万歩計を使用して、変形のある股関節に対して無理のない適切な運動量を管理します。歩行のフォームに乱れがあり、歩数が増加した場合は症状の増強を認める場合があるためです。 

□ まとめ

変形性股関節症における外出頻度は、単なる生活習慣ではなく、身体機能・心理的健康・社会的つながりを維持する重要なテーマです。痛みがあるからこそ「動かない」のではなく、「可能な限り痛みをコントロールしながら動く」ことが、長期的な自立生活につながります。

フィジオセンターでは、根拠に基づいた評価と運動療法を通じて、「安心して外出を続けられる身体づくり」をサポートしています。変形性股関節症・変形性膝関節症をお持ちで、医療機関で外来リハビリテーションを受けられない方や、保険制度上リハビリが終了してしまった方、並行して追加のリハビリテーションを希望される方には、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755

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