本日のブログでは、スポーツをしている学生や若年層に多くみられる「腰椎分離症(ようついぶんりしょう)」について解説します。この腰椎分離症は、腰痛の原因の一つとして知られていますが、実際にはどのような病態で、なぜ起こるのかをご存じでしょうか。研究論文やアスリートのサポートの現場の観点から、腰椎分離症の基礎・発生のメカニズム・運動療法のコンセプトなどを解説します。
□腰椎分離症とは?
腰椎分離症とは、腰椎(腰の骨)の後方部分にある「椎弓(ついきゅう)」の一部が疲労骨折を起こし、骨折部から考えて上下の骨の連続性が断たれた状態を指します。特に第5腰椎と第4腰椎(L4)に多くみられます。この「分離」は、繰り返しのストレスによって少しずつ骨に亀裂が入る疲労骨折と考えられています。発育期の骨はまだ完全に硬化していないため、特に成長期の中高生に好発します。
□好発年齢とスポーツとの関係
腰椎分離症は、10〜18歳の成長期に多く見られ、スポーツ活動が盛んな中高生に特に多い疾患です。代表的な競技としては以下のようなものがあります。
・野球
・サッカー
・バレーボール
・バスケットボール
・体操・器械体操
これらの競技に共通しているのは、腰を大きく反らす(伸展)動作や、ひねる(回旋)動作を繰り返すという点です。腰椎後方の椎弓部分にはこれらの動作によって大きなせん断ストレスが加わり、結果的に骨の一部に微細な損傷が蓄積します。
□発生のメカニズムと病期の分類
腰椎分離症の発生過程は、次のように段階的に進行すると考えられています。
・初期:椎弓に微細な骨ストレスが加わり、骨膜や骨質に炎症反応が起こります。MRIでは骨髄浮腫(炎症のサイン)が確認される段階で、骨折線はまだ明確ではありません。特にレントゲン撮影のみでは、この段階での診断は専門医でも難しいと報告されています。
・進行期:繰り返しの負荷により、骨の連続性が部分的に損なわれ始めます。この時点で適切に安静と治療を行えば、骨癒合が期待できます。
・終末期:骨折部が完全に分離し、骨癒合が得られにくい状態になります。この段階では骨の隙間に線維組織が形成され、慢性的な腰痛の原因となることがあります。
□主な症状
・腰の鈍痛または運動時痛
・反る動作での痛みの増強
・安静時は軽快するが、運動再開で再び悪化
・長時間立っていると腰が痛くなる
□フィジオセンターでのアプローチについて
基本的には、整形外科専門医での診察と診断が最優先ですが、この腰椎分離症をお持ちの方に対する、施術とコンディショニングは以下の内容をご提案する事が可能です。
・1つ目は、股関節の関節可動域の改善です。股関節の伸展(反る動き)と内旋(大腿が内側に向く動き)の関節可動域制限があるケースは腰椎分離症を発症しやすい事がわかっています。分離症を起こしている、腰椎の負担を軽減するため、これらの股関節の関節可動域制限がある場合は、固さのある組織や筋肉に対してストレッチを行い、股関節の関節可動域を改善します。
・2つ目は、体幹深層筋(特に多裂筋・腹横筋)の安定化トレーニングです。腰椎分離症を起こしている周辺の多裂筋は経験上、萎縮(やせてしまう事)を呈しており、分離症を起こしている腰椎の部分が過剰に動いてしまう傾向がみられます。この萎縮を起こした筋肉は、再教育(エクササイズ)を行わないと機能が戻りにくい事がわかっています。そのため、筋の張りや量を確認して、必要な多裂筋エクササイズを実施します。
□まとめ
腰椎分離症は、成長期のスポーツ選手に多い疲労骨折であり、早期発見・適切な安静・段階的なリハビリによって多くが回復します。痛みを我慢して練習を続けると、骨癒合が難しくなり、将来的な腰痛や分離すべり症のリスクが高まります。そのため、腰痛が2~3週間継続するようなら、早期に整形外科専門医(スポーツ整形外科)などの受診の必要性が高いと考えられます。
フィジオセンターでは、そういった診断結果に沿った形で、お一人おひとりの状態に合わせたリハビリプログラムを提案しています。腰椎分離症の診断がわかった上で、医療機関で外来リハビリテーションを受けられない方や、保険制度上リハビリが終了してしまった方、並行して追加のオーダーメイドのリハビリテーションを希望される方には、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755