側弯症(そくわんしょう)とは、背骨が三次元的にねじれて曲がる病気で、多くは成長期の子どもや思春期に見つかります。見た目の変化だけでなく、呼吸のしにくさや運動機能の低下、心理的ストレスなど、日常生活に大きく影響を及ぼすことがあります。
重度の側弯症では、手術(矯正と脊椎の固定)が必要となることがありますが、その手術後のリハビリは回復にとって非常に重要です。
2025年に発表された国際的なレビュー論文では、「手術後に病院で行うリハビリテーションはどのような内容が望ましいか」について、過去5年間の研究をもとにまとめられました。本記事では、そのポイントをわかりやすく解説します。
◆ 手術後のリハビリが必要な理由
手術によって脊椎を矯正・固定することで背骨の変形は改善されますが、その一方で以下のような変化や不調が一時的に起こることがあります:
- 肺の機能が低下する(肋骨の変形や固定の影響)
- 筋力や姿勢のバランス感覚が弱くなる
- 痛みや不安で動くことが怖くなる
- 自立した生活に不安が残る
これらを乗り越えるために、呼吸訓練・筋力トレーニング・バランス訓練・日常動作の再習得などが含まれる包括的なリハビリが必要です。
リハビリの具体的な内容(入院中)
研究では、以下のような段階的なリハビリプログラムが有効です:
【1日目〜2日目】
- 呼吸法の練習(肺活量を回復)
- ベッド上での軽い関節運動
- 立ち上がりの練習(支援あり)
- ベッド横や病棟内での短距離歩行
- 日常生活動作の練習
【3日目〜退院まで】
- 洗顔や着替えなど日常動作の練習
- バランス感覚の訓練(片足立ちなど)
- 自力での歩行、階段の昇降
- 自立した生活を意識した動作訓練
最終的には、退院後に自信を持って日常生活を送れるよう、「自立支援と再適応」を目指してプログラムが進められます。
なぜ「呼吸」と「バランス」が重要なの?
手術後は、背骨と肋骨の動きが制限されるため、肺が広がりにくくなることがあります。そのため、深呼吸や肺を意識的に使う訓練が非常に大切です。
また、背骨の形が変わることで身体の重心やバランス感覚も一時的に狂うことがあります。バランスの再教育や姿勢の再調整を行うことで、転倒や不安感を防ぎ、スムーズに回復できます。
研究からの提言:「教育」と「準備」が大切
多くの研究が強調しているのは、手術の前から患者さん本人が正しい知識を持ち、退院後の生活をイメージできていることが、スムーズな回復に直結するという点です。
- リハビリ内容の説明
- 日常動作のシミュレーション、
- パンフレットや動画での教育
などが、患者さんの安心感や積極性を高め、再発や合併症の予防にもつながります。
回復には「段階」があります
このレビューでは、世界各国の研究データから、術後のリハビリには適切なプロトコル(手順)が必要であると述べられています。
そして最も大切なのは、「焦らず、段階的に進めること」。
退院後も無理なく日常生活に戻れるよう、病院でのリハビリだけでなく、ホームエクササイズを適切に継続することが大切です。
参考文献:
Raposo C, Oliveira D, Severino S, et al. Post-operative rehabilitation in a hospital setting for people with scoliosis: a narrative review. Salud, Ciencia y Tecnología. 2025; 5:1049. DOI: 10.56294/saludcyt20251049
フィジオセンターでは、術前術後のリハビリをしっかりサポートさせて頂きます。
東京慈恵医科大学病院E棟2階 フィジオセンター
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電話:03-6402-7755
理学療法士:大田(シュロス側弯症セラピスト)