側弯症の経過観察中において、特に冬季はカーブの進行に対する注意が必要です。12月は期末試験や受験勉強などにより長時間の座位を強いられる機会が多く、運動量も著しく低下します。さらに、気温の低下により屋外での身体活動が減少しやすく、運動不足が顕著になる傾向があります。これらの生活習慣の変化は、脊柱のアライメントに対し負担をかけ、側弯の進行リスクを高める要因となります。
また冬場は厚着をする機会が増えるため、外見からの姿勢の崩れに気づきにくくなるという問題もあります。身体のラインが見えにくくなることで、本人も周囲も姿勢の変化に対する認識が鈍くなり、側弯の早期進行に気づくタイミングが遅れる可能性があります。
では、なぜ長時間の座位姿勢が側弯症にとって問題となるのでしょうか?
座位姿勢では、立位に比べて筋活動が大幅に減少し、体幹支持筋(特に脊柱起立筋や腹横筋など)の使用頻度が低下します。これにより、姿勢保持機能の低下が生じやすくなります。さらに、前傾姿勢をとることで重心が前方へシフトしやすくなり、結果として猫背や骨盤後傾が誘発されます。
また、机上での学習時には利き手側に体を傾けてノートを取るなど、左右非対称な荷重や姿勢が生じやすく、それに加え、下肢を組む、脚を抱えるといった習癖的な動作が加わることで、体幹および骨盤周囲に回旋や側屈ストレスが加わります。これらの不良姿勢が継続されることにより、成長期にある脊柱への機械的負荷が一方向に蓄積し、側弯の進行を促進することが報告されています。
特に、スマートフォンやタブレットを使用する時間も含めると、1日あたり2~3時間以上、非対称かつ不安定な姿勢を取り続けていることになり、これは起きている時間のおよそ1/3〜1/4に相当します。このような長時間の姿勢崩れが常態化することで、側弯の進行リスクはさらに高まると考えられます。
したがって、受験生や試験期間中の学生においては、定期的な姿勢のリセット(立ち上がっての体操や体幹ストレッチ)、運動機会の確保、バランスのとれた左右対称の座位姿勢の意識づけが極めて重要です。加えて、厚着をしている季節こそ、定期的に鏡で姿勢を確認する、自宅では軽装で姿勢チェックを行うなど、視覚的フィードバックを得る工夫も有効です。
冬場の姿勢の悪化が気になる方へ
寒い季節は厚着や運動不足により、ご自身の姿勢の崩れに気づきにくくなる傾向があります。もし姿勢の変化や側弯の進行にご不安がある場合は、ぜひ当センターまでご相談ください。
当センターでは、体幹筋の筋力評価や、姿勢保持に重要な体幹インナーマッスルの機能検査、さらには骨盤の歪みや左右バランスのチェックなど、詳細かつ丁寧な姿勢評価を行っております。
検査結果に基づき、一人ひとりの状態に合わせた運動指導を実施しており、特に「シュロス法」に基づいた側弯症改善体操を中心に、効果的かつ安全なエクササイズをご提案いたします。
姿勢の悪化は放置せず、早期の評価と対応が大切です。お気軽にご連絡ください。
東京慈恵医科大学病院 E棟2階 フィジオセンター
問い合わせ:info@physiocenter.jp
TEL:03-6402-7755
担当:理学療法士(シュロス側弯症セラピスト) 大田