パーキンソン病における心理的要因が運動能力に与える影響

パーキンソン病における心理的要因が運動能力に与える影響

― 不安・抑うつ・動作への「構え」をどう捉えるか ―

パーキンソン病をお持ちの方から、「身体はまだ動くはずなのに、外に出ると急に歩きにくくなる」、「転ぶのが怖くて、動く前から体が固まってしまう」といった声を伺うこがあります。

これらの背景には、筋力や関節可動域といった身体機能だけでは説明できない要因が関与している事もあります。その一つが、心理的要因です。

本日のブログでは、パーキンソン病における代表的な心理的要因を整理し、それらが運動能力にどのような影響を及ぼすのか、さらに運動療法の中でどのように考慮すべきかを解説します。


1.パーキンソン病における心理的要因とは

パーキンソン病では、運動症状に加えて非運動症状が高頻度にみられます。心理的要因もその一つであり、発症初期から進行期まで幅広く認められます。代表的なものとしては、

・不安(anxiety)
・抑うつ(depression)
・転倒恐怖感(fear of falling)
・自己効力感の低下

が挙げられます。

これらは単なる気分の問題ではなく、辺縁系などの神経回路の機能変化と関連しています。特に不安や抑うつは、ドパミン系・セロトニン系の機能変化と関係し、運動制御や動作にも影響を及ぼします。


2.心理的要因が運動能力に及ぼす影響

心理的要因は、運動能力に対して複数の経路から影響します。

① 動作開始・動作切り替えへの影響

不安が強い状態では前頭前野の関与が過剰となり、動作が意識的になりやすくなる場合があります。その結果、

・歩き始めに時間がかかる
・動作がぎこちなくなる
・フリージング・オブ・ゲイトが誘発されやすくなる

といった現象が生じやすくなります。

② 筋緊張の亢進と運動効率の低下

心理的緊張は交感神経活動を高め、筋緊張を増大させ易くなります。これにより、

・筋固縮の増強
・代償的な同時収縮の増加
・エネルギー効率の低下

が起こりやすくなり、「疲れやすい」「長く動く事が難しい」といった訴えにつながります。

③ 身体活動量の低下

転倒恐怖感や自己効力感の低下は、「危ないから動かない」「どうせできないからやらない」という行動選択を生み、日常生活における身体活動量を低下させます。この活動量低下は、廃用や身体機能低下を加速させる悪循環を形成する事もあります。


3.エビデンスから見る心理的要因と運動能力の関係

近年の研究では、心理的要因と運動能力の関連が数多く報告されています。

・不安や抑うつの程度が高いほど、歩行速度や歩行安定性が低下する
・転倒恐怖感は、実際のバランス能力とは独立して活動量を制限する
・自己効力感が高いほど、運動介入の効果が持続しやすい

また、有酸素運動やリズミカルな反復運動は、不安・抑うつ症状の軽減に有効であることがシステマティックレビューでも示されており、運動が心理状態を改善し、その結果として運動能力を高めるという双方向の関係が注目されています。


4.心理的要因を考慮した運動療法の基本的な視点

心理的要因を考慮せずに、運動の「正しさ」や「量」だけを重視しても、十分な効果は得られにくい事が多いと感じます。

重要な視点として、

・成功体験を積み重ねやすい課題設定
・結果だけでなく過程を評価するフィードバック
・不安が生じやすい場面を段階的に練習すること
・呼吸や姿勢調整を通じた心理的な緊張緩和

が挙げられます。

外部刺激(視覚・聴覚キュー)を活用することで、心理的負荷を軽減しながら運動パフォーマンスを引き出すことも有効です。


5.フィジオセンターでの実践的アプローチ

フィジオセンターでは、運動能力の低下を「身体機能だけの問題」とは捉えず、その背景にある心理的要因を含めて考慮して、介入を組み立てることを重視しています。

具体的には、

・不安、抑うつ、転倒恐怖感の有無や程度を含めた評価
・症状が出やすい動作、時間帯、環境要因の整理
・心理的負荷を考慮した運動課題の段階的設定

を行います。

例えば、「歩行が不安定」という訴えに対しても、単に筋力やバランス能力を評価するだけでなく、どの場面で不安が強くなるのか、その不安が動作にどう影響しているのかを丁寧に確認します。

そのうえで、「動けた」「できた」という体験を積み重ねながら、身体と心理の両面から「動ける感覚」を取り戻す支援を行っています。


まとめ

パーキンソン病における運動能力は、筋力や可動域といった身体機能だけで決まるものではありません。不安や抑うつ、転倒恐怖感といった心理的要因は、運動を関与する大きな因子です。

「なぜ動きにくいのか」を身体だけに求めず、心理面も含めて評価・介入すること。それが、無理なく継続できるリハビリテーションにつながります。

フィジオセンターでは、パーキンソン病をお持ちの方に生じる、様々な症状の面からパーキンソン病の運動療法をサポートしています。運動に対する不安やお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755

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