― 痛みを「動きの問題」として捉え直す ―
パーキンソン病をお持ちの方から、「肩や腰が慢性的に痛む」「体がこわばって動くと痛い」といったお話を伺うことがあります。実際、パーキンソン病における痛みは非運動症状の中でも出現頻度が高く、生活の質に大きく影響する症状とされています。
一方で、この痛みは単なる筋肉や関節の障害としては説明できない場合が多く、運動制御や中枢神経系の機能変化が深く関与しています。本ブログでは、パーキンソン病における痛みの特徴を整理し、運動療法がどのように痛みに作用するのか、そして実際の施術・コンディショニングでどのように活かされているのかを解説します。
1.パーキンソン病における痛みの特徴
パーキンソン病をお持ちの方の痛みは、一般に以下のように分類されます。
・筋骨格系疼痛
・ジストニア関連疼痛
・中枢性疼痛
・神経障害性疼痛
この中でも特に多いのが筋骨格系疼痛であり、肩・腰・股関節などに出現しやすいとされています。しかし重要なのは、これらの痛みが姿勢異常、筋固縮、動作緩慢、左右非対称な運動パターンと密接に関係している点です。
さらに、ドパミン系の機能低下により痛覚閾値が低下することも報告されており、同じ刺激でもより痛みとして知覚されやすくなる中枢性要因も指摘されています。
2.運動療法が痛みに有効とされる理由
運動療法がパーキンソン病の痛みに有効とされる背景には、複数の作用機序が関与しています。
① 姿勢・アライメントの修正
前屈姿勢や体幹回旋の制限は、局所的な過負荷を生み、慢性的な疼痛につながります。運動を通じて体幹伸展・回旋可動性・重心位置を整えることは、疼痛の力学的要因を軽減します。
② 筋緊張と運動協調性への作用
筋固縮や過剰な同時収縮は、筋内圧上昇や血流低下を引き起こし、痛みを助長します。リズミカルで反復的な運動は、筋緊張の調整と運動の効率化を促します。
③ 中枢性疼痛抑制機構の活性化
有酸素運動や全身運動は、内因性オピオイドやドパミン放出を促し、下行性疼痛抑制系を活性化すると考えられています。システマティックレビューにおいても、定期的な運動介入が痛みの主観的評価を改善することが示されています。
3.エビデンスから見る運動と痛み
近年の研究では、
・有酸素運動(散歩やエルゴメーター)
・ダンスやリズム運動
・大振り動作を特徴とする運動プログラム(例:LSVT® BIG)
が、痛みの軽減およびQOL改善に有効であると報告されています。特に重要なのは、局所的な対処ではなく全身運動として介入することが効果につながっている点です。
4.痛みに対する運動療法で重要な視点
痛みがある状態では、防御的な運動戦略が強まり、動作はさらに小さく硬くなります。その結果、痛みと運動制限の悪循環が形成されます。
そのため運動療法では、
・痛みを我慢する運動になっていないか
・動作が適切に効率的に行われているか
・薬効時間や日内変動を考慮しているか
といった点に十分配慮する必要があります。
5.フィジオセンターでの実践的アプローチ
フィジオセンターでは、パーキンソン病の痛みを「痛みそのもの」だけではなく、「動作と運動制御の問題として現れている症状」として考えています。
まず初期評価では、
・痛みの種類(筋骨格系・ジストニア関連など)
・出現する動作・姿勢・時間帯
・ON/OFF 時間との関連
・痛みと運動パフォーマンスの関係
を詳細に整理します。次に、静的姿勢だけでなく、歩行・立ち上がり・方向転換などの動作分析を行い、体幹・四肢の協調性や左右差、過剰な筋活動の有無を評価します。
そのうえで、
・痛みを誘発しにくい姿勢条件
・動作のスケールやリズムを調整した運動
・呼吸と連動させた運動課題
を用いながら、「動かすと悪化する」ではなく、「この動き方だと楽に動ける」動き方を確認しながら進めています。また、運動量は一律に増やすのではなく、運動の質と再現性を優先し、段階的に拡大していきます。
「痛みがあるから動けない」のではなく、「どう動くと痛みが軽減するのか」を一緒に探索していくことが、長期的な疼痛管理と活動量維持につながると考えています。
まとめ
パーキンソン病における痛みは、筋・関節だけの問題ではなく、運動制御、中枢神経機能、姿勢、活動量が複雑に関与しています。運動療法は、これらに同時に働きかけることができる、非常に重要な介入手段です。
フィジオセンターでは、パーキンソン病に伴う痛みに対しても、専門的な評価と運動療法を通じて支援を行っています。パーキンソン病をお持ちで痛みでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755