側弯症に対する脊柱固定術では、変形した椎体を矯正し、金属製のスクリューやロッドによって椎体間を安定させることが目的です。この術式において、椎体と肋骨(肋椎関節)は直接固定されるわけではなく、呼吸に関与する肋骨の可動性自体は理論上維持されているはずです。
しかし、術後の患者さんにおいてはしばしば次のような変化が見られます:
- 胸郭の拡張感が乏しい
- 深く息を吸うことが難しく感じる
- 呼吸が浅く、体力低下を感じる
このような現象は、単に肺や横隔膜の問題ではなく、術後の胸郭の可動性制限と深く関係しています。
呼吸時における肋骨の働きとその重要性
呼吸運動において肋骨は、吸気時に胸郭を拡張し、呼気時には元の位置に戻るという連動した動きを繰り返しています。この一連の動きは、上部・中部・下部で異なる運動パターンを持ち、肺の換気において非常に重要な役割を果たしています。
術後には、この肋骨の滑らかな動きが制限されることで、呼吸効率に影響を及ぼすことが少なくありません。
固定術後に求められる見過ごされている視点
脊柱の固定により安定性が得られた一方で、呼吸に必要な胸郭の動きをどのように維持・改善していくかが、術後の呼吸リハビリテーションにおける重要な課題となっています。
当施設では、運動学の専門「理学療法士」で、かつ側弯症の専門セラピスト「シュロス側弯症セラピスト」により、術後の経過や状態に応じて、呼吸機能と胸郭の柔軟性の回復を目的とした評価とアプローチを実施しています。
それは単に筋を伸ばすだけではなく、解剖学的な構造と呼吸のメカニズムに基づいた“動きの質”の回復を重視したものです。
具体的な技法の詳細は割愛いたしますが、当センターでは独自のツールや手法を組み合わせ、術後の患者様が安全かつ効果的に呼吸機能を再構築できるようサポートしています。
胸郭の動きが変わることで得られる変化
胸郭の可動性が改善することで、次のような臨床的変化が期待されます:
- 呼吸が深くなり、日常動作での疲労感が軽減
- 肺活量の改善と持久力の向上
- 呼吸に関連した姿勢パターンの正常化
- 精神的な落ち着きや自律神経の安定にも寄与
これは術後リハビリの一環としてだけでなく、長期的な生活の質(QOL)を高めるための基盤にもなります。
おわりに
脊柱固定術後のリハビリテーションにおいて、「背骨が安定したから終わり」ではありません。呼吸という日常的かつ無意識の動作を再構築することが、真の意味での術後回復につながります。
当センターでは、こうした術後の呼吸機能や胸郭の柔軟性を重視し、個々の状態に合わせた対応を行っています。
もし術後に呼吸の浅さや疲れやすさ、肩こりや首の痛み、もしくは腰痛を感じている方がいらっしゃれば、お気軽にご相談ください。
東京慈恵医科大学病院 E棟2階 フィジオセンター
問い合わせ:info@physiocenter.jp
TEL:03-6402-7755
担当:理学療法士(シュロス側弯症セラピスト) 大田