「最近、歩幅が小さくなってきた」、「以前より歩くと疲れやすい」などのお話を、パーキンソン病をお持ちの方やご家族様から、お悩みをお伺いする事があります。歩幅の低下は、見た目の変化だけでなく、歩行の不安定性や転倒リスクの増加とも関係しています。
本日のブログでは、パーキンソン病において歩幅が小さくなる理由を整理したうえで、歩幅改善に有効と考えられているステップエクササイズについて、エビデンスを踏まえて解説します。
1.なぜ歩幅が小さくなるのか
パーキンソン病による歩幅低下は、単純な筋力低下が主因ではありません。
主に関与しているのは、
・大脳基底核を中心とした運動スケーリング(動作の大きさ調整)の障害
・動作の自動化機能の低下
・姿勢制御や体重移動のタイミングの乱れ
などが関係していると考えられています。その結果、「一歩をどれくらい出すか」という基準が脳内で曖昧になり、歩行中に歩幅が徐々に縮小していきます。これは意識や努力の問題ではなく、神経学的な特徴として生じるものです。
2.歩幅改善に対するエビデンスの考え方
近年の研究では、歩幅改善のためには「歩く距離を増やす」だけでは不十分であり、
・動作の振幅を明確に意識すること
・一歩一歩に注意を向ける課題
・視覚・聴覚などの外部キューを利用すること
が有効であると報告されています。これらは、低下した自動化を補い、脳に「大きく動く感覚」を再学習させるアプローチといえます。
3.ステップエクササイズとは
ステップエクササイズとは、歩行の構成要素である「一歩」を切り出して練習する運動です。
特徴は、
・明確な踏み出し位置がある
・前後・左右・斜めなど多方向の動きが含まれる
・体重移動と姿勢制御を伴う
点にあります。このような課題は、歩幅の拡大だけでなく、すくみ足や方向転換時の不安定さの改善にも関与するとされています。
4.基本的なステップエクササイズ例
■ 前方ステップ
1.安定した姿勢で立つ
2.床に目印を置き、「普段より大きく」一歩前へ踏み出す
3.踏み出した足にしっかり体重を乗せる
4.元の位置に戻る
5.左右交互に行う
速さよりも、一歩の大きさと体重移動の質(踏み出した足に適切に体重をかけられているか)を重視します。
5.効果を高めるための工夫
・床にテープやマーカーを置く(視覚キュー)
・声に出して動作を確認する
・鏡で動きを確認する
・疲労や集中力低下が出る前に終了する
特に、「大きく出しているつもり」と実際の動作には差が生じやすいため、外部の基準を使うことが重要です。
6.頻度と注意点
ステップエクササイズは、回数や時間よりも動作の質が重要です。
・ふらつきが強い日は無理をしない
・動作の調整が難しく、フォームが乱れてしまったら中止する
・翌日に疲れや、動きにくさを残さない
短時間でも、良質な一歩を繰り返し脳に入力することが効果的と考えられています。
7.フィジオセンターでの実際の考え方
フィジオセンターでは、例として以下の内容を考慮してエクササイズを実施します。
■ 介入前に行う評価
まず、以下の点を確認します。
・すくみ足の有無・出現場面:歩き始め、方向転換、狭い場所など、どの場面で問題が強いかを確認します。
・姿勢・体幹機能:前屈姿勢や体幹の不安定さは、歩幅低下と密接に関係します。
・服薬の On / Off パターン:薬効時間帯による動作の変化を把握します。
・生活環境・転倒歴:ご自宅の環境や実際に困っている動作場面を重視します。
■ 評価を踏まえた個別調整
これらを踏まえて、
・前・横・斜めなど適切なステップ方向
・一歩の距離、回数、休憩の入れ方
・自宅で行うセルフエクササイズと、専門介入で行う課題の役割分担
を個別に設定して、エクササイズを実施します。
まとめ
パーキンソン病における歩幅低下は、病態に基づいた自然な変化であり、適切な時期に適切な介入の必要性が高いと考えられています。大切なのは、一歩の質に注目すること、無理のない形で続けること、状態に応じて調整することです。
「この練習で合っているのか不安がある」、「自分に合った方法を知りたい」そう感じたときは、ぜひフィジオセンターにご相談ください。専門的視点から、その方に最適な歩行改善のアプローチをご提案します。
理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755